電子と光の融合で情報通信社会の持続的発展を

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 産業技術総合研究所(産総研)電子光技術研究部門主催(光産業技術振興協会(光協会)共催)の第3回電子光技術シンポジウムが2月25日(火)、東京は秋葉原UDXギャラリーで開催されました。
今回のテーマは「電子と光の融合を目指して」、サブタイトルは「ネットワークからインターコネクションへ」でした。

 
 情報通信トラフィックは爆発的に増えています。これに伴って引き起こされる情報通信機器の電力エネルギー消費の増加が、いま大きな問題となっています。この問題を解決して情報通信社会の持続的発展を実現するには、新しい電子技術と光技術が融合して省エネルギー・低環境負荷の大容量情報通信技術の開発が必要です。

 今回のシンポジウムでは産総研が関わる、フォトニクス・エレクトロニクス融合システム基盤技術開発(PECST)、超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発(光エレクトロニクス実装)、光ネットワーク超低エネルギー化技術拠点(VICTORIES)の三つの光情報通信(光情報伝送)関連のナショナルプロジェクトを中心とした最新の研究開発成果が紹介されました。
 また、広域網から機器内配線に渡る情報通信技術分野で最先端のシステム、デバイスの研究開発を展開している研究者の方々による特別講演と招待講演も行なわれ、その最新状況が披露されました。
 
 シンポジウムで発表された優れた研究開発成果は、内外から高い評価を得ています。しかしながら、大事なのはその後の事業化です。プロジェクトに参画している民間企業が、その成果をどのようにビジネスに活かして行くのか、各社の経営陣に課せられた責任には重いものがあります。

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 当日の講演テーマと講演者の方々は、以下の通りです(☆印は特別講演と招待講演)。
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★開会挨拶:産総研 情報通信・エレクトロニクス研究分野 研究統括 金山敏彦氏
        光協会 専務理事 小谷泰久氏

★大容量光通信に向けた産総研の取り組み:
   産総研 電子光技術研究部門長 原市聡氏

☆特別講演:光電子融合基盤技術の展開-FIRSTプロジェクトの成果を中心にして:
   東京大学 生産技術研究所 教授 荒川泰彦氏

☆招待講演:光エレクトロニクス実装プロジェクトの狙いと開発状況:
   光電子融合基盤技術研究所 サブプロジェクトリーダー 蔵田和彦氏

★CMOS技術によるシリコンフォトニクス集積:
   産総研 電子光技術研究部門 堀川剛氏

☆招待講演:広帯域・高密度オンボードインターコネクトのためのGI型ポリマー光導波路:
   慶應義塾大学 理工学部 准教授 石榑崇明氏

★3次元光回路:
   産総研 電子光技術研究部門 森雅彦氏

★光電子ハイブリット回路基板技術開発-有機・ポリマーフォトニクス:
   産総研 電子光技術研究部門 佐々木史雄氏

☆招待講演:
 全世界のIDC内の総バンド幅を一台で実現するTSUBAME3.0へ向けたExtreme Big Data技術:
   東京工業大学 学術国際情報センター 教授 松岡聡氏

☆招待講演:超低エネルギー光ネットワークに向けた産総研拠点の取り組み:
   産総研 ネットワークフォトニクス研究センター長 並木周氏

★基幹・機器内光ネットワークの大容量化に向けた高密度周波数多重化技術:
   産総研 電子光技術研究部門 山本宗継氏

★閉会挨拶:産総研 電子光技術研究部門長 原市聡氏

編集顧問:川尻多加志

 

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雪解け

シンポジウム会場

シンポジウム会場

光産業技術振興協会(光協会)と光電子融合基盤技術研究所の主催による「平成25年度光産業技術シンポジウム」が2月13日(木)、リーガロイヤルホテル東京にて開催されました。

開会挨拶をする光協会・小谷専務

開会挨拶をする光協会・小谷専務

33回目を迎える今回のテーマは「超情報化社会を切り拓く革新的フォトニクス」。
光協会の小谷泰久専務理事の開会挨拶に始まり、経済産業省(経産省)・商務情報政策局・情報通信機器課の荒井勝喜課長が来賓の挨拶を、その後は以下に記すように、前半が視覚を中心としたユーザインタフェースに関する研究開発トピックス、後半は光電子融合技術に関する二つのナショナルプロジェクトが紹介されました。

★代替現実システムとその可能性
理化学研究所・脳科学総合研究センター・適応知性研究チーム・藤井直敬リーダー

★将来の立体テレビ実現に向けた技術開発
NHK放送技術研究所・立体映像研究部・清水直樹研究主幹

★車載用ステレオカメラの開発(衝突しない自動車から自動運転へ)
東京工業大学・放射線総合センター・実吉敬二准教授

★光テクノロジーロードマップ-光ユーザインタフェース-
NTTメディアインテリジェンス研究所・画像メディアプロジェクト・高臨場映像通信技術G
高田英明主任研究員

★最先端研究開発支援プログラム
“フォトニクス・エレクトロニクス融合システム基盤技術(PECST)開発”

光電子融合基盤技術研究所・中村隆宏研究統括部長(共同研究者)

★超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発
-集積光デバイス開発を中心に-

光電子融合基盤技術研究所・光エレ実装プロジェクト・森戸健サブプロジェクトリーダー

後半で紹介された二つのナショナルプロジェクトのうち、PECSTは平成21年3月にスタートした内閣府・最先端研究開発支援プログラム(FIRSTプログラム)の一つ。LSIチップ間の伝送容量ボトルネックを打破するため、チップ間伝送密度10Tbps/cm2を目標に、システム実証と革新的技術の探求の両輪で目標突破を目指したもので、プロジェクトは今年度で終了します。
これまでの代表的な成果としては、システム実証では、目標の3倍を越える世界最高の伝送密度30Tbps/cm2を今年度初めに達成。革新的技術においては、量子ドットレーザのシリコン基板上への貼り合わせ技術で、世界最高の動作温度110℃を実現するとともに、フォトニック結晶変調器では、素子長50μmで10Gbps動作と温度範囲100℃を超える温度無依存動作を世界で初めて実証するなど、東京大学・ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構長の荒川泰彦教授が中心研究者としてプロジェクトを牽引して、FIRSTプログラムの中でも最高ランクの評価を受けています。

一方、平成24年9月に経済産業省・未来開拓研究プロジェクトの一つとしてスタートした超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発(平成25年度からNEDO委託)は、これも荒川教授をリーダーとして、6年と4年の2期合計10年間で総額約300億円を使って、光エレクトロニクス実装システム技術の基盤技術の確立を目的に、シリコンフォトニクスをコアとする光インターコネクトをサーバ筐体内のボードレベルからチップ間まで適用する事を目指すというものです。
光技術導入の段階に応じて、光I/Oコア、光I/O付きLSI基板、光電子集積インターポーザを順次開発していく計画で、PECSTのシリコンフォトニクスデバイスの開発成果を最大限活用して事業化を図るとともに、プロジェクトを共同実施する大学が大容量・低消費電力化を両立する革新的デバイス技術の研究開発を行なうとしています。

この手のプロジェクトが本当に真価を問われるのはこれから。成果の事業化が成功するかどうかにかかっていると思います。日本企業の世界における競争力の強化や国内雇用の創出、我が国の国力の拡充に貢献する事を心より願っています。

今回、光協会の小谷専務は、開会挨拶の中で「光産業は凍えている状態がしばらく続いたが、ようやく雪解けの時期を迎えた。円高から円安へ、そして需要不足と過少投資の改善によって、我慢の時代を乗り越えて、将来に向かって色々な活動を進めていく時期に来た」と述べていました。経産省・荒井課長も来賓挨拶で「アベノミクスの成果が次第に現れてきた」と述べていました。シンポジウムも、その後に開かれた懇親会も、確かに昨年よりも明るい雰囲気に包まれていたという印象でした。これが実感として感じられる事を期待したいと思います。

櫻井健二郎氏記念賞・受賞者の方々(右から渡邉氏、小舘氏、菊地氏、大城氏)

櫻井健二郎氏記念賞・受賞者の方々(右から渡邉氏、小舘氏、菊地氏、大城氏)

なお、シンポジウム終了後、第29回(2013年度)の櫻井健二郎氏記念賞が発表されました。
今回の受賞は以下の2グループ、4人の方々でした。おめでとうございました。

★位相相関フィルタを用いた光相関技術とそのシステム化の研究開発
電気通信大学・先端領域教育研究センター・渡邉恵理子特任助教と電気通信大学・小舘香椎子特任教授(日本女子大学名誉教授、Photonics System Solutions代表取締役)の両名

★レーザーの医療応用に関する学術・社会・産業界における貢献と普及活動
医療機器センター・菊地眞理事長(日本レーザー医学会理事長、ふくしま医療機器産業推進機構理事長)と日本医用レーザー研究所・大城俊夫所長(慶光会理事長)の両名

編集顧問:川尻多加志

 

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主要研究機関に見る光ナノテクデバイス

 東京ビッグサイトで1月29日から31日まで開催された「nano tech 2014」。主催者発表によれば国内出展者数496、海外(21の国・地域)出展者数142、来場登録数は3日間で45,841人でした(他にも六つの展示会が同時に開催されましたが、それらの出展者数や来場登録数はこの数字には含まれていません)。

 今回は、ナノテクでも光に関連するデバイス、それも我が国における主要研究機関で行なわれている幾つかの研究・開発にスポットライトを当ててみました。

 

物質・材料研究機構【物質・材料研究機構】

◇光異性化反応を利用した光機能有機トランジスタ:光電変換やメモリ、多値スイッチングといった機能を新規トランジスタ素子構造で実現して、分子デバイスの新しい動作原理を実証する研究を行なっている。光異性化分子を用いて可逆的な光誘起半導体-絶縁体相転移を実現した。オンオフ比で200:1という光スイッチ動作を確認しており、光でイオン分極する分子をDual-gate型トランジスタに応用した素子では、メモリ効果を持った多値スイッチ動作を実証。

◇フォトニックラバー:変形で色が変わるゴム状フォトニック結晶。直感的に認識しやすい色や発色特性を利用して、ものの変化や危険の察知、生活の豊かさの向上などに役立てる。日常的にありふれた材質を用いて、微細構造の制御によって様々な発色が可能で、かつその色が変形によって変化する弾性材料を開発するとともに、工業化が可能な製造技術の開発を目指している。

◇発光ナノシート:照明やディスプレイデバイスなどの高機能化のための高輝度、低環境負荷、多彩な発光色など、様々な特徴を持った発光材料を開発している。発光材料のナノシート化によるホスト励起を介した発光の誘起(強度増加)や容易で安価な発光ナノシート稠密配向膜の製作、発光ナノシートと様々な物質の組み合わせによる励起および発光波長などの制御に関する研究を行なっている。

◇液状アントラセンを基材とするフルカラー発光制御:発光特性の光・熱安定性に優れ、簡便にフルカラー発光の調整が可能で、さらに過度な折曲げを想定したフレキシブルデバイス加工に最適な蛍光色素の開発を研究。汎用の有機蛍光色素アントラセンに、柔らかく、かさ高い側鎖を導入する事で優れた光安定性を持ち、フルカラーで発色する塗布可能な液体材料を開発した。

 

産業技術総合研究所【産業技術総合研究所】

◇サブミクロン球状粒子の光学応用:サブミクロンレベルで形状の揃った1次粒子より成る様々な結晶性球状粒子の合成と光学応用を研究。液中レーザ溶融法によって結晶性の酸化亜鉛や酸化チタン等のサブミクロン粒子を合成し、これらを用いる事で優れたレーザ発振特性を有するランダムレーザの構築や太陽電池特性の向上が可能な事を確認した。

◇光で相変化を示す有機材料:耐熱・耐光性に優れ長期データ保存が可能な、光と熱の作用によって可逆的な相変化(結晶相-アモルファス固体相)を示す有機材料の開発を行なっている。有機材料を用いる事で、メディア製造プロセスにおいて、塗布や印刷が適用でき省エネに貢献する。アントラセンに特定の置換基を導入することで材料を開発、フォトマスクによって位置選択的に相変化させ、簡便な偏光観察で目視ができる光パターンの作成に成功した。

◇調光フィルタを用いた新生児医療への応用:電気的に透明状態と着色状態切り替える調光フィルタの実用化研究を行なっている。早産児は昼夜のある環境で育てる方がより体重が増加するが、新生児集中治療室は治療を行なうため夜間、暗くならない病院もあるという事で、この調光フィルタを新生児の医療ケア用保育器へ応用するとともに、材料の基本性能を確認している。

◇酸化物発光デバイス:化学的安定性や耐熱性に優れたペロブスカイト型酸化物を用いて100V以下で駆動する自発光薄膜型ELデバイスやカソードルミネッセンスデバイス(CL)の開発、ならびに次世代照明・ディスプレイへの応用研究を行なっている。14V、1kHzの交流電圧を加えて透明電極全体で色純度の優れた赤色発光に成功しており、蛍光薄膜に電子線を照射して最高輝度200cd/m2のCLを得る事にも成功。

 

理化学研究所【理化学研究所】
◇新世代塗布型有機エレクトロニクスの材料・プロセス・デバイス・基盤技術開発:有機ELデバイスや有機薄膜太陽電池の構造作製法において、大面積化と膜構造制御の両方に利点を持つ静電スプレー堆積(ESD)法を研究。p型およびn型有機半導体やその水性コロイドインクを材料として積層デバイスを試作・評価、大面積で平坦・均一な薄膜作製の塗布条件を検討している。

◇光配向ホログラムの高速書込みと保持を両立する単分散ナノ粒子:サイネージ等の表示素子に向けたホログラム研究を行なっている。光配向によって屈折率が変化するアゾベンゼン誘導体を微粒子化し、高分子バインダに分散する事でホログラム材料を作製、高速応答を維持したまま保持機能を飛躍的に向上させた。

◇g-C3N4薄膜化技術-高機能メタルフリー光触媒の開発:g-C3N4(Graphitic Carbon Nitride)は地球上に豊富に存在する水素、炭素、窒素のユビキタス元素から成るメタルフリー光触媒で、水の分解や有機物除去、センサー特性を有する。溶けない粉末であるために、これまではシート配向が制御できなかったが、グアニジン炭酸塩を用いた蒸着重合法によって、シートが基板に対し並行に配向した薄膜の開発に成功した。

 

情報通信研究機構【情報通信研究機構】
◇有機電気光学ポリマーとシリコンを融合した超小型・高性能電気光学変調器:シリコン1次元フォトニック結晶と有機電気光学ポリマーとのハイブリッド構造を実現する事で、従来のLN変調器に比べ1000分の1の素子サイズと変調効率10倍の素子性能を達成した。シリコンチップ内の電気配線を光配線に置き換え、高性能コンピュータの高速・低消費電力化や巨大化する情報通信システムの小型・高速化・少エネ化に貢献する。

◇半導体量子ドットを用いた1.55μm帯光増幅器:分子線エピタキシ装置を用いて半導体ナノ構造の形成法を高精度で制御。超高密度量子ドット形成技術で温度依存性の小さい低消費電力レーザを実現するとともに、量子ドット半導体光増幅器作製技術によってコンパクトで広帯域な光増幅を実現した。

◇光取り出し効率の向上による深紫外LEDの高効率化、高パワー化と実用化開発:殺菌、浄水、医療、各種センシング、分析、光リソグラフィ、環境汚染物質の分解など、幅広い分野での活用が期待される200~300nmの深紫外LEDの高効率化や長寿命化、小型化といった実用レベルの開発を目指している。ナノインプリント技術を用いたナノ光構造によって高効率化を実現して、光取り出し効率1.9倍を達成した。

編集顧問:川尻多加志

 

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「Opt Osaka 2014 in Tokyo ―大阪大学の光科学100―」が3月6日に東京で開催

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大阪大学の平野俊夫総長は発想力と発信力の素晴らしい方だ。

「大阪大学は創立100周年の2031年に世界でトップ10に入る研究型総合大学になる」
「大阪大学はGLOBAL UNIVERSITY『世界適塾』として輝く存在になる」
そのように夢を語り、実現に向け次々と具体策を示し、周りをグイグイと引っ張っておられるようにお見受けする。
数々示されている戦略的活動展開の一つが今回3月6日に地元大阪ではなく、東京で開催されるシンポジウム「Opt Osaka 2014 in Tokyo ―大阪大学の光科学100―」である。
主催する未来戦略機構は,平野俊夫総長のリーダーシップのもと、部局横断的な教育・研究を推進するために,2011 年度に発足し現在,8つの部門で運営されている。

大阪大学は、昔からレーザーや量子ビーム技術と応用を含めた光量子科学に関する研究が活発であり、多くの部局で基礎から応用に至る研究と教育を行ってきた。この光量子科学に関する研究ポテンシャルを一層高め部局横断的な光量子科学研究を推進するため、昨年6月に未来戦略機構に光量子科学研究部門が設立され、現在では110数を超える研究室・グループが関連の活動を展開している。

これらの光量子科学研究部門に焦点を絞り行なうのが今回のシンポジウムで、当日は文部科学省・文部科学審議官の土屋定之氏,日本学術会議・会長の大西隆氏,内閣府総合科学技術会議・議員の久間和生氏が来賓として参加される予定だ。

シンポジウムの前半において、「光科学における様々な連携研究」をテーマに
「光量子科学における連携研究とシナジー」(阪大光科学センター長・兒玉了祐氏)、
「ナノフォトニクスとイノベーション創出」(阪大フォトニクスセンター長・河田聡氏)、
「レーザー科学と共同利用・共同研究拠点」(阪大レーザーエネルギー学研究センター長・疇地宏氏)
というテーマで講演される予定だ。

また、シンポジウムの後半では、大阪大学におけるフォトニクス(ナノフォトニクス、パワーフォトニクス、プラズマフォトニクス)とその応用や量子ビーム技術を含めた光量子科学に関する多くのコアコンピタンスを紹介することを目的に、学内の110の研究室・グループによるポスター発表会や紹介冊子(大阪大学の光科学100)の配布が予定されている。
光に関わる者にとっては是非参加してみたいシンポジウムで開催要領は下記の通りである。

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●シンポジウム名:「Opt Osaka 2014 in Tokyo ―大阪大学の光科学100―」
●日時:2014年3月6日(木)午後12時30分より受付
●会場:東京大手町サンケイプラザ4階ホール
 (千代田区大手町1-7-2 TEL:03-3273-2258)
http://www.s-plaza.com/access/
●主催:大阪大学未来戦略機構

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詳細および申込は下記サイトより。
http://www.photon.osaka-u.ac.jp/

 

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末松安晴先生、日本国際賞を受賞!

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 東京工業大学・栄誉教授の末松安晴先生が2014年(第30回の)日本国際賞(ジャパンプライズ)を受賞されました。
 発表は1月29日(水)の午後1時から東京のアーク森ビルイーストウィング37階「アークヒルズクラブ」で行われました。
 この賞は、事前に誰が受賞するのか教えてくれないのですが、今年は物理・化学・工学領域の中の「エレクトロニクス、情報、通信」と生命・農学・医学領域の中の「生命科学」の二分野で受賞という情報だけは入手していましたので、「もしや」と思って授賞式に出席したところ、この記念すべきこの朗報に接する事ができたという次第です。
 光エレクトロニクス技術に関わる全ての方々にとって、大変大きな喜びだと思います。おめでとうございます。

 「エレクトロニクス、情報、通信」分野で受賞された末松先生の受賞理由は「大容量長距離光ファイバー通信用半導体レーザーの先導的研究」。インターネットを始めとする情報ネットワークを支える大容量長距離光ファイバー通信に道を拓いた功績が認められたものです。
 読者諸兄は既にご存知だと思いますが、末松先生は1974年に位相シフトを有する周期的構造を用いた反射器を半導体レーザーに集積することを提案、高速変調時に発振波長が安定する動的単一モードレーザーの概念へと発展させました。
 並行して、光ファイバーの損失が最小となる1.5μm帯で発振するInGaAsPレーザーの室温連続発振も実現、1981年にはこれらの技術を組み合わせ、位相シフトを有する反射器を集積したInGaAsPレーザーを1.5μm帯で室温連続発振させ、動的単一モード動作を世界で初めて実証しました。
 月刊オプトロニクスでも、先生が東工大の学長だった頃、私がインタビューをさせていただき、その辺の事情をうかがった事が思い出されます。
 
 受賞理由の中に「要求される性能を予想し、理論と実験を組み合わせて新たなパラダイムを通信用半導体レーザーにもたらし、光通信波長で動的単一モード発振を実現した末松博士の業績は、工学研究のあるべき姿を示している」とありましたが、先生は挨拶の中で「戦後の我が国の技術開拓史の中で、研究開発段階から世界の最先端で進められたのは光通信が最初。革新的な技術が世の中に浸透するには、半世紀に及ぶ実に長い年月を要する。工学的な研究手法そのものをずばりと認識していただき、その高い見識に大変感謝しています」と述べていたのが、大変印象的でありました。

 なお、もうお一人「生命科学」分野での受賞者は、米国ロックフェラー大学のデビッド・アリス教授(米国)。DNA配列の変化を伴わない遺伝子の後天的変化を研究するエピジェネティクスの学問領域で、世界で初めて「遺伝子発現の制御機構としてのヒストン修飾を発見」した業績が評価されました。
 
 授賞式は4月23日(水)に東京で開催される予定で、各氏に賞状、賞牌と賞金5,000万円が贈られます。

 蛇足ですが、東京工業大学「栄誉教授」は最初「名誉教授」の間違いかと思ったのですが、本当に「栄誉教授」という称号があるそうです。東京工業大学ではノーベル賞、文化勲章、文化功労者、日本学士院賞またはそれらと同等の教育研究活動の功績をたたえる賞もしくは顕彰を受けた者に付与できるとの事です。

編集顧問:川尻多加志

 

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有機EL照明はデザインで勝負!

前回ブログで、ソニーとパナソニックが有機ELディスプレイパネルの開発提携を解消したという事をお伝えしましたが、有機EL応用でもう一つ注目されているのが照明分野です。そこで、1月15日(水)から17日(金)までの3日間、東京ビッグサイトで開催されたライティングジャパン2014に行ってきました。
ライティングジャパン2014は、次世代照明技術展、LED/有機EL照明展、東京デザイン照明展の三つの展示会で構成されています。全体の展示会における出展品はというと、すでに大きな市場を形成しているという事もあって、LED照明関連が圧倒的に多いのですが、さて有機EL照明はどんなものが?という事で、会場内を探してみました。

結果として、有機EL照明の多くが東京デザイン照明展に出展されていました。これは、有機EL照明が一般家庭やオフィス、工場などで使うには価格など幾つかの面で、まだLEDに比べて不利という点に加え、有機ELが持っている形状を始めとした特性の優位性を前面に打ち出せるデザイン照明で強みを発揮できるという事でしょう。

ルミオテックのブース有機EL照明のパイオニア的な存在であるルミオテック。2種類の正方形モデルと3種類の短冊形モデルを有していて、それぞれに2,800K~4,900Kの色温度を揃えています。輝度は3,000cd/m2、厚さは2.1mmと2.3mmがあります。展示会では日本ベッド製造と共同で、ベッド周りの寝室什器に有機ELパネルを張って、睡眠に適した柔らかい光を生み出せると提案していました。この他、多くのデザイナーが設計した有機EL照明も展示していました。

パナソニック出光OLED照明のブース一方、パナソニック出光OLED照明は色温度3,000K(輝度:3,100cd/m2)、4,000K(輝度:2,800cd/m2)、5,000K(2,600cd/m2)の3種類のパネルをラインアップしています。こちらの厚さは2.22mmだそうです。

 

 

 

フィリップスのブースこの2月から「Lumiblade OLED Panel GL350」で日本市場に参入すると発表したのがフィリップス エレクトロニクスジャパン。色温度は3,200K、通常時4,000cd/m2、高出力時6,500cd/m2、厚さは3.3mm。展示会場ではインターラクティブミラーと3Dモジュールシステムを参考出展していました。インターラクティブミラーとは、有機EL照明とミラーが合体したもの。細かいブロックに分かれて光っている有機EL照明の前に立つと、自分の姿が映る部分のブロック照明が消えてミラーになるという仕組みです。

東雲LCD(左)とタカハタ電子(右)のブースLG製パネルを使っているものも幾つかありました。東雲LCD(写真左)の有機ELフレキシブル照明やNEXTのオーディオ・スタンド、リビングルーム用ムードライトなどはLG製でした。

タカハタ電子(写真右)が出展したデスクスタンドは、診療室などの医療現場でシーンを選ばずに使えるというもの。看護師が夜間巡回の時に使うナースライトは、まぶしくないので患者の睡眠を妨げないという事です。こちらは製品によってパイオニア、ルミオテック、パナソニックのパネルを使い分けているそうです。

関連部材に向けますと、日本電気硝子が有機EL照明用の高屈折率ガラス基板「HX-1」を出展していました。nd1.63という屈折率を持つこの基板は、オーバーフロー成形法で作られているので、非常に平滑な表面を持っています。散乱層など凹凸を形成する他の内部光取り出し技術に比べ、歩留まりを低下させないそうです。同社は、厚さ35μmという超薄型ガラスを長尺ロールに巻いた「G-Leaf」も出展。ガラスの優れた機能と信頼性をそのままに、ガラスのフィルム化を実現したという事です。

ところで、一般的に有機ELはLEDに比べて寿命が短いとの指摘があります。ところが、照明器具に使われているコンデンサなどの部品寿命は、パネルよりはるかに短いそうです。ですからパネル寿命が延びても、その前に他の部品が壊れてしまって照明器具として予想より早く故障してしまうという声を会場で聞きました。LED照明でも同じ事が言えるそうですが、本当でしたら「それって、どうなのよ?」って気がしますね。
そういえば、ずいぶん前に買った我が家のLED懐中電灯は、チップは大丈夫なのですが接触が悪いのか、何回か叩かないと点かなくなってしまいました。

編集顧問:川尻多加志

 

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明けましておめでとうございます

 明けましておめでとうございます
 本年もよろしくお願い申し上げます

 昨年末のニュースで恐縮なんですが、ソニーとパナソニックが有機ELパネル開発の提携を解消したという事です。両社は2012年6月にテレビや大型ディスプレイ用の有機ELパネルとモジュールの共同開発で合意、印刷方式をベースに開発を進め、2013年末までに量産技術を確立する予定でした。

 提携解消の理由に挙げられているのが、歩留まりが悪く高コストという状況を期限内に克服できなかったという点と、有機EL市場の立ち上がりが当初の予想より鈍く、早期の事業化が困難と判断したという点です。

 確かに、サムソン電子とLG電子は既に有機ELテレビを商品化していますが、価格が高いなどの理由で、売り上げが伸びていないのが実情です。価格が高いという事は、歩留まりもかなり悪いという証拠でしょう。

 テレビ市場は今後、フルハイビジョンから4Kに移行すると言われています。この状況下で、年間100億円以上とも言われている有機ELパネルの研究・開発費の負担は重く、その分を4K液晶テレビに注力したいと判断したようです。

 ただし、ソニー、パナソニックともに有機ELテレビの将来の重要性は認めていて、それぞれが独自に研究・開発を進めて行くとも言っています。実際、米国で開かれているCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)2014では、パナソニックがRGBオール印刷方式の曲面型4K有機ELパネルを出展しています。将来における個別技術テーマの共同開発や協業の可能性はあるという事です。

 少し先の事より目の前の利益を大事にしたいというのは、日本のテレビメーカーが置かれている状況を考えれば無理のない事だと思いますが、やり方を工夫して何とか提携を続けるという選択肢はなかったのでしょうか?そのメリットよりデメリットの方が上回るという高度な判断なのでしょうが、ちょっと残念な気がしてなりません。

 もう一つ、これも昨年末のニュースです。個人的な趣味の話で申し訳ないのですが、私の尊敬するミュージシャン(プロデューサー、アレンジャー、レコーディング・エンジニア、音楽論研究家、etc.)、大瀧詠一氏が12月30日に亡くなりました。

 大瀧氏を初めて知ったのは、大瀧氏と細野晴臣氏、松本隆氏、鈴木茂氏が結成したバンド「はっぴいえんど」が1970年に発表したアルバム、通称「ゆでめん」でした。その後、アルバムを2枚発表してソロとなり、オールディーズ、ニューオリンズ・ロック、はたまた音頭までを取り込んだ、他に類を見ない非常に良質なアルバムを何枚かリリースしました。

 余りにも趣味的として、当時は一部の人からしか評価されませんでしたが、1981年のアルバム「A LONG VACATION」がミリオンセラーになった事で、一般の人にも名前が知られるようになりました。数多くの歌手に楽曲を提供した事でも知られています。

 その膨大な音楽的知識と理論は傑出していました。それが失われてしまったのは、日本の音楽界にとって大きな損失だと思われてなりません。
 どうも思い入れが強すぎ、どんどん文章が長くなりそうなので、この辺にしておきます。

 謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

編集顧問:川尻多加志

 

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究極の自然エネルギー

 太陽から地球に届くエネルギーは17京4,000兆Wと言われています。このうち実際に人類が使えそうなものは1,000兆W、2008年に人類が使ったエネルギーは15兆Wという事ですから、現状では使えそうなエネルギーの67分の1、届いているエネルギーの1万1,600分の1しか使っていないという計算になります。
 
 この太陽エネルギーを電気に変換する太陽電池が注目され、今もメガソーラーの建設申請が相次いでいますが、残念ながら太陽電池は夜や雨の日には発電できないので、その稼働率は14~15%にとどまっています。
 また、発電していない時は火力発電など、他で電力をまかなわなくてはなりません。期待されているスマートグリッドや蓄電池、ネットワーク化の対策は正直、研究段階の域を出ていません。
 さらに、火力発電などの値段が8~10円/kWhなのに対し、太陽電池は日本でのフィード・イン・タリフ開始時で42円、この値段で電力会社が買わなくてはならず、その費用は結局は消費者が負う事になります。

 そこで、地上3万6,000kmの宇宙空間に太陽光発電所を建設して、地上に電力エネルギーを送る宇宙太陽光発電が注目を集めています。宇宙太陽光発電は、昼夜天候に関係なく安定した電力が確保でき、設備稼働率も90%以上なので、一説にはロケット費用を加えても8~10円/kWhという低コストの電力が可能とも言われています。
 地上へ送る方式には、マイクロ波を用いる方式とレーザーを用いる方式があって、マイクロ波方式は雲があっても減衰しないので、天候に関係なく送る事ができるのですが、受け取るアンテナが数kmと大きくなってしまいます。一方のレーザー方式は雲などで減衰はしてしまうのですが、アンテナは数百mと小さくて済むと言われています。それぞれに一長一短があるというわけです。

 宇宙太陽光発電はもともと1968年、P.E.Glaser博士によって概念が提示されました。米国では1977年から1980年にかけ、DOEとNASAによってConcept Definition Studyが行なわれましたが、この時は費用がかかりすぎるなどの理由で凍結されてしまいました。
 その後、1995年から1997年の間、NASAがSSP(Space Solar Power)の概念とその技術を検討したFresh Look Studyを発表。これに議会が興味を示し1998年、NASAはSSP Concept Definition Studyを実施しました。
 さらに1999年から2000年にかけては、宇宙太陽光発電に関する先行的研究および技術開発プログラムであるSSP Exploratory Research and Technology(SERT)を実施。軍関係でも2007年、米国宇宙安全保障局がフィージビリティ・スタディを実施して野心的なロードマップを示し、戦場におけるエネルギー供給は1$/kWhでも成立性があると述べています。

 一方の我が国では1991年から1993年まで、NEDOによって宇宙発電システムに関する調査研究が行なわれましたが、長期的すぎる実現時期や発電規模の最適化などの問題もあってか、プロジェクト化できずに終わっています。その後、1998年からはNASDAとJAXAが検討会を立ち上げ、コストモデルの作成や複数ワーキンググループの設置、ロードマップの作成や伝送実験などを行なって現在に至っています。

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 去る12月18日(水)、東京・御茶ノ水の化学会館において未踏科学技術協会主催の「宇宙太陽光発電実現加速」ワークショップが開かれました。

 ワークショップでは、三菱総合研究所の科学・安全政策研究本部、長山博幸主席研究員が「宇宙太陽光発電実現の歴史的努力と課題」を講演。上述の歴史とともに米国や中国の最新の動きを解説されました。
 特に、中国は2035年までに100MW級のSSPS(Space Solar Power Satellite)試作機で電力供給実験を行ない、2050年までに静止軌道上に商用SSPSを完成させると言っています。どこまで本当なのか判断しかねるものの、やると決めたらどんな事をしてでもやる国柄だという点には留意しなくてはならないようです。
 国際協力についても日本が優位に立つ技術開発をしないと、お金だけ持って行かれる懸念もあるので要注意という事です。

 長山氏は宇宙太陽光発電がこれまでに実現しなかった原因として、30年という長期の研究開発をどこが担当するのかという行政面での問題。送電以外のところの要素技術の研究開発が進んでいない技術面での問題。さらに経済面では、徐々に規模を拡大するビジネスモデルが取れないという点を指摘していましたが、6兆円プロジェクトであるリニア新幹線の進め方をお手本として、宇宙太陽光発電についてもアポロ計画のように目標を持って「行くぞ」という気持ちで集中投資をすれば出来る筈と指摘していました。
 
 もう一つの講演は、京都大学・生存圏研究所の篠原真毅教授による「太陽発電衛星(SPS)からの無線電力伝送技術と地上での実用化展開」です。
 篠原教授は、宇宙太陽光発電実現のためには、先ずは私たちの身のまわりで無線電力伝送の実績を上げて、一般の人の認知度を上げるのが重要と指摘していました。そうなれば自ずから宇宙太陽光発電への理解も深まるというわけです。
 例えば「Suica」に代表されるような磁場・電場利用非接触タイプやRF-IDのような電波利用距離タイプの一層の商品化を進める。さらに今年9月に発表された米国のベンチャー企業、Ossia社の空中送電技術「Cota」は、9mも離れた場所からiPhoneに1Wの電力を送信できると注目を集めています。電気自動車への無線電力伝送も認知度向上に大いに役立ちそうです。それから大電力長距離無線電力伝送の研究開発を推し進めるべきとの提言は、現実を踏まえたものとの印象を受けました。

 一方で、篠原教授は規格の重要性も訴えていました。世界におけるデファクトスタンダードとも言えるQi規格を作ったWireless Power Consortium(180社加盟)では中国が存在感を示しています(Qi(チー)は中国語)。これに加えて、MIT特許を元にサムソンやクアルコムが主導するAlliance for Wireless Power(60社加盟)、イスラエル企業が作った方式でIEEEがバックアップするPower Matters Alliance(95社加盟)の3大規格が、いま熾烈な競争を繰り広げています。しかしながら、そこに日本の存在感はありません。

 日本国内ではブロードバンドワイヤレスフォーラム(127社加盟の内ワイヤレス電力伝送システムWGは55社加盟)、ワイヤレス電力伝送実用化コンソーシアム(28社、31学識者、2研究機関加盟)、ワイヤレスパワーマネージメントコンソーシアム(24社加盟)、エネルギーハーべスティングコンソーシアム(60社加盟)の4団体が活動していますが、協力して総務省標準化を進め、世界に挑んで行くべきだとの提案には同感です。

 1980年代から宇宙太陽光発電と無線電力伝送の研究は日本が中心でした。日本の存在感を示すべき時は、今でしょ!
 これが今年最後のブログになります。来年もよろしくお願いいたしいます。良いお年を。

編集顧問:川尻多加志

 

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半導体産業市場の明日はどっちだ

セミコン

 先週(12月4~6日)、幕張メッセで行なわれたセミコン・ジャパン2013。主催者発表によれば、展示会出展者数は共同出展者を含め671社/団体、出展小間数は1,612小間、出展国数17国/地域、延べ来場者数は57,029人という規模でした。
 2012年の出展社数が19カ国・855社/団体で、小間数1,935小間ですから、かなり落ち込みましたが、逆に来場者は34,145人から大幅アップという結果になっています。
 
 半導体分野の技術開発トレンドは、450mmウエハと3D-ICのようです。いかに大きなサイズのウエハを用いて低コスト化を図るか、3Dで性能をアップさせるかという点が注目されています。

 今回の展示会、何時ものように光を応用した測定評価装置がかなり多く出展されていましたが、ここではそれ以外で目についた露光装置など、レーザを用いた加工装置を紹介したいと思います。

【ニコンエンジニアリング】
 20nm以下のプロセス量産用に開発したArF液浸スキャナ「NSR-S622D」をパネル展示していました。投影レンズ性能とオートフォーカス機能を改良する事で、マルチパターニングへの対応が可能な装置間重ね合わせ精度3.5nm以下、解像度38nm以下を実現、毎時200枚以上の高スループットも維持しています。EUVは高価という事で、同社はマルチパターニングArF液浸方式で勝負という感じでしょうか。
 また、小型・簡単・リーズナブルをコンセプトにしたMEMS/LED製造に適したミニステッパ「NES1-h04」と「NES2-h04/h06」もパネル展示していました。ともに波長は405nm、「NES1-h04」は解像度2.0μmで6インチまで対応、「NES2-h04/h06」は解像度2.0μm並びに3.0μmで8インチまでに対応するとの事です。

【ウシオ電機】
 UXシリーズの中の2.5D/3Dパッケージ向け露光装置「UX7-3Di」をパネル展示。12インチウエハに対応でき、解像力は2μm L/Sを達成しています。
 一方、バンドパスフィルタやNDフィルタの必要がなくi線、h線、g線の各波長ごとの出力調整や露光タイミングが制御できる、LED ollimation Technology(LCT)を用いた同社のリソグラフィ用LED光源は長寿命、低温処理、シンプルな光学機構を実現するとの事です。

【日本製鋼所】
 エキシマレーザアニール(ELA)システムとハイブリッド固体レーザ(Hybrid Advanced disc Laser:HADL)アニールシステム、レーザ微細穴加工装置をパネル展示していました。
 ELAシステムはELAMOD(Excimer Laser Assisted Metal Organic Decomposition)法を採用、低温ポリシリコンTFTフラットパネルディスプレイ製造におけるアモルファスシリコン膜の結晶化に用いられていますが、同社ではそれ以外の応用製品の開発にも取り組んでいるとの事です。
 HADLアニールシステムは、LDからの808nmとYb-YAGレーザの第二高調波515nmの2波長を使う事で0.3~3μmの範囲の活性化深さの制御が可能。レーザ微細穴加工装置はKrFエキシマレーザの波長248nmを使用しています。

【ディスコ】
 高スループットを実現するレーザソー「DFL7161」を実機展示していました。アブレーションによって、ワークへの熱ダメージがほとんどない、衝撃や負荷が少ない、加工難易度が高い硬質なワークにも対応、幅10μm以下の微細ストリートも加工可能という特長を有しています。
 この他、レーザを用いたステルスダイシング用モデル2機種「DFL7341」と「DFL7361」も実機展示していました。

【キヤノンマーケティングジャパン】
 3DSYSTEMS社製の産業用3Dプリンタをパネル展示。レーザを用いた金属粉末焼結3Dプリンタ「Phenixシリーズ」、3Dレーザビームプリンタ「Projet6000/7000シリーズ」、光造形3Dプリンタ「iProシリーズ」、樹脂粉末焼結3Dプリンタ「sProシリーズ」が紹介されていて、実際に作った造形品も展示されていました。

 液浸方式を含む現状のArFリソグラフィ装置で大きなシェアを有し、EUVLの研究・開発に注力するASMLは今年も出展していませんでした。日本市場には魅力を感じないって事でしょうか?
 SEMIの発表によれば、2013年の世界の半導体製造装置市場は、対前年比13.3%減の320億ドルと予測されています。今回の展示会、入場者数は増えたものの出展者数・小間数が大きくへこんだという結果は、その影響もあるのでしょう。
 一方、2014年は一転して23.2%増になると予測されています。それが日本の半導体産業市場にも良い影響を及ぼす事を祈らずにはいられません。
 セミコン・ジャパンは来年、24年ぶりに東京に戻って来ます(会場は東京ビッグサイト)。

編集顧問:川尻多加志

 

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三次元で半日

セミナー風景

 12月3日(火)の午後から東京・秋葉原のマイクロマシンセンター新テクノサロンで開かれたマイクロナノ先端技術交流会に参加してきました。

 この交流会は、主催者である一般財団法人マイクロマシンセンターが、MEMS産業の裾野を広げ、その発展を促進するためにマイクロナノイノベータ人材育成プログラム事業の一環として実施しているもの。毎回、大学等において先端的研究に従事する方々を講師に迎え、産学交流を目的に開かれており、今回で24回目を迎えます。

 今回のテーマは「3次元光加工・精密造形技術の最前線」。同分野の最前線で活躍している産業技術総合研究所・先進製造プロセス研究部門・基盤的加工研究グループの岡根利光グループ長と京都大学・工学研究科・材料化学専攻の平尾一之教授を講師に迎え、その研究・開発の最新動向が紹介されました。

 マイクロマシンセンターの青柳桂一専務理事の挨拶の後、トップバッターとして登場した産総研・岡根グループ長は「3Dプリンターのものづくりへの活用」と題して、いま話題の3Dプリンターの種類と特徴、3Dプリンターの鋳造への活用と「超精密三次元造形システム技術開発」プロジェクトへの取り組みを紹介されました。

 この技術は、従来ラピッド・プロトタイピングと呼ばれ、樹脂素材を造形して試作や形状確認に用いられてきましたが、ファイバレーザーの高出力化といった技術的進展によって、近年ではABS樹脂など高品質の樹脂や金属素材の積層が可能になり、そのまま部材に使用できる事が視野に入ってきた事から、俄然注目を集めるようになりました。名称も、今はアディティブ・マニュファクチャリング(AM)と呼ばれています。

 このAMにはシート積層造形(LOM)、溶融積層造形(FDM)、光造形(SLA)、粉末積層造形(SLS/SLM)の四つがあり、基本特許が切れて低価格な製品が出ているのが溶融積層造形で、レーザを用いるのがシート積層造形と光造形、粉末積層造形の三つになります(ただし粉末積層造形には電子ビームを使用するものもあります)。

 講演では、米国やEUのナショナルプロジェクトも紹介され、今後の課題として設計技術、検査技術、製造技術、利用技術の他、標準化・規格化、人材育成、地域産業の底上げ、データの保護制度が重要と指摘されていました。特に標準化・規格化は、我が国がこの産業分野で取り残されないためには必須という印象を受けました。

 二番手の京都大学・平尾教授は、これまでにも平尾誘起構造プロジェクトやナノガラス技術プロジェクト、三次元光デバイス高効率製造技術プロジェクトなど、数々のプロジェクトを牽引してきた事で有名ですが、今回の講演「3次元ナノ光加工の現状と今後の展開」では、京都大学が注力しているナノテクノロジーハブ拠点や超短パルスレーザー加工の研究・開発事例が紹介されました。

 ナノテクノロジーハブ拠点は、京都大学の学際教育研究推進センターのユニットの一つで平成23年5月にスタート。低炭素社会実現に必要不可欠なエネルギーを「創る」「蓄える」「使う」「戻す」を念頭において、様々な革新的次世代材料とナノマイクロデバイスの研究開発を加速するため、多種多様な基板・薄膜材料をウエハレベルでナノ・マイクロ加工・評価ができる各種装置を揃えているそうです。高度な専門技術職員のサポートを受ける事もでき、しかも基本的に情報公開義務がないので、企業が安心して研究・開発を行なえる環境が整っているという事でした。

 さらに講演では、従来切削で行なっていたものを積層で実現する三次元積層造形装置のいくつもの応用例の紹介するとともに、フェムト秒レーザーに代表される短パルスレーザーの加工事例として、色素増感型太陽電池や有機ELディスプレイのガラス真空封止、ガラス中の泡を無くして実現した割れない薄型フレキシブルディプレイや窓用太陽電池、LED高効率化のためのサファイア基板切断、ディスプレイの反射を1/3に抑えたナノ無反射構造パネルやナイトビジョンへの応用、光導波路一括加工、10~20nmといった波長限界を超える加工、非侵襲癌治療、5次元メモリ、ナノワイヤ・ナノ粒子の作製など、非常に幅広い研究・開発が紹介されました。
 
 中でも位相変調型液晶空間光変調器(LCOS-SLM)を併用して1mmの石英ガラス中にCD3枚分のデータ保存に成功して、共同研究者の日立製作所による過酷試験で3億年という耐久性を確認できたというお話は、確か新聞でも紹介されていたと思いますが、これぞ究極のアーカイブメモリという印象でした。

 また、ロームと京都のベンチャー企業アクアフェアリーとの共同研究開発事例として紹介された、その場で水素を作ることができる定置用小型水素源燃料電池は、その二日後の12月5日付け日刊工業新聞の1面で大きく取り上げられるなど、まさにホットな話題がたっぷりの講演でありました。
 
 講演終了後は懇親会も開かれ、参加者と講師の方々との間で熱心なディスカッションが続いていましたが、今後も興味あるテーマの講演企画を期待しています。

編集顧問:川尻多加志

 

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