-赤外線セミナー

2018年11月14日(水) 09:30-12:25
【-1 赤外線の基礎と非冷却センサ

赤外線の基礎

静岡大学 廣本 宣久
赤外線は、可視の赤よりも波長が長い(周波数が低い)光で、光や電波と同じく、電磁波の1つです。空間を光速で伝搬する電気と磁気の波であり、また光子であり電磁気力を媒介する素粒子です。
この光・電波の波動性と粒子性は、主に、媒質中を伝搬する時は波の性質、放射、吸収など物質と相互作用する時は粒子の性質が顕われると考えることができます。
赤外線は、近年、赤外検出器や光学素子の性能向上、小型化、低価格化によって、その利用範囲が、急速に拡大し、さまざまな応用の可能性が広がっています。赤外線の科学的な理解に基づき、その特性を踏まえて、技術の革新がさらに進むものと考えられます。
本講演では、今後のより高度な利用、新しい応用を切り拓くために必要となる、赤外線の科学・技術の基礎を説明します。主な内容は、以下の通りです。

1. 赤外線 
2. 研究の歴史 
3. 熱放射と熱光源
4. 赤外半導体光源
5. 伝搬、大気減衰
6. 透過材料 
7. 検出器の感度、雑音、NEP 
8. 赤外線計測の方法と応用
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

非冷却赤外線イメージセンサ

三菱電機(株) 藤澤 大介
非冷却赤外線イメージセンサは、シリコン基板上に断熱構造を有する画素を2次元アレイとして形成したものであり、赤外線を吸収する赤外線吸収体と温度センサから構成された温度検知部において、赤外線の入射により発生する微小な温度変化を検知する。非冷却赤外線イメージセンサの開発動向は、画素サイズ縮小とともに高感度化の技術開発が著しく、各メーカーにおいても小型画素を適用したイメージセンサの製品化が進められている。
今回の講演では、非冷却赤外線イメージセンサの中で、三菱電機が開発を行っているSOIダイオード方式を中心に非冷却赤外線イメージセンサ技術について紹介する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

プラズモニクス・メタマテリアルを応用した高機能非冷却赤外線センサ

三菱電機(株) 小川 新平
従来の非冷却赤外線センサは物体からの熱放射を検知するため、特定の波長や偏光を検知することは不可能であった。特定の波長のみを検知することが可能になれば、火災検知やガス分析などの分析用途への応用展開が可能である。また、究極的には個別の画素が別個の波長を検知する多波長赤外画像センサの実現が期待できる。さらに、特定の偏光を検知することができれば、人工物と自然物の判別など識別能力を強化した偏光イメージセンサの実現が期待される。波長選択や偏光見地を実現する手法として、分光フィルタや偏光子をセンサに装着する手法が一般的である。しかし、画素ごとにフィルタが必要であることからコストの増大や性能の劣化が問題となっていた。
プラズモニクスやメタマテリアル技術を応用した新たな吸収体は、吸収体表面パターンに応じた波長や偏光のみを吸収する。プラズモニックメタマテリアル吸収体を非冷却赤外線センサに搭載することにより、波長選択や偏光検知といった機能をセンサ単体で実現できる。このような高機能非冷却赤外線センサによって、比較的画素数の少ない火災検知やガス分析用の低コスト、高性能検出器が実現できる。さらに、表面パターン制御のみで任意の波長や偏光が検知できることから、大規模なアレイ化にも対応でき、マルチカラーイメージセンサや赤外偏光イメージセンサの実現が期待できる。
本講演では、プラズモニクスやメタマテリアルの基礎的な紹介と非冷却赤外線センサへの応用について述べる。
難易度:中級程度(大学院程度、ある程度の経験を有す)

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2018年11月14日(水) 13:00-15:55
【-2 赤外線計測応用の話題

赤外線カメラとその応用

日本アビオニクス(株) 宇田 康
赤外線の歴史は、1800年W。 Herschel(英)が発見したことから始まり、その後多くの研究がなされ、現在では広い分野でその技術が応用されている。その一つに赤外線カメラがあり、「全ての物体からは、その温度に関係付けられるエネルギー(プランクの放射則)の赤外線が放射される」という原理から、その赤外線を画像化する暗視カメラや、定量化し温度計測カメラなどに利用されている。
近年、非冷却二次元赤外線センサ(UFPA)が開発され、MEMS技術の向上などにより、狭ピッチ・多画素化、高性能化、低価格化が進み、赤外線カメラの様々な分野で利用が拡大している。その種類は使用目的により、保守保全用ハンディタイプ型、研究開発用高性能多機能型、特殊計測用光学フィルタ内蔵型、計測システム用固定設置型など多岐にわたる。
本稿では、赤外線カメラの動作原理、特徴、性能・機能を有効に活用するための技術、更にその応用例について紹介する。
難易度:初級程度(大学専門程度、基礎知識を有す)

赤外線における波長ごとの特性を用いた計測

(株)アイ・アール・システム 舘花 一人
赤外線はあらゆる物から発せられています。その量は主に物体の温度に依存します。つまり、温度の高い物の方が強く光っていることになります。それを利用して、温度測定や人体検知などに用いられてきました。さらに近年では赤外線カメラの低価格化により、サーモグラフィや暗視カメラなどが広く使用されるようになっています。
しかし、赤外線の用途はそれだけではありません。
可視光線において波長の違い(色)があるように、赤外線でも波長によって違いがあります。波長ごとに見え方が違います。肉眼(可視)では判別できない違いが見えることがあります。例えば、特定の波長を用いると、透明な水やガスが赤外カメラで黒く見えるなど。
本講演では、そのような赤外線の波長による見え方の違いを利用した計測例を紹介します。
難易度:一般的(高校程度、一般論)

地球観測衛星による赤外線リモートセンシング

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 片山 晴善
赤外線センサを搭載した地球観測衛星は、気象観測、災害観測、環境観測などの地球観測ミッションにおいて、重要な役割を果たしている。
温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)に搭載されている温室効果ガス観測センサ(TANSO)は、短波長赤外領域および熱赤外領域の地表面からの太陽光反射光および地球大気からの放射を観測することにより、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスを高精度に測定する。気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)は、多波長光学放射計(SGLI)を搭載し、雲、エアロゾル(大気中のちり)、海色、植生、雪氷などの観測を行う。SGLIの赤外走査放射計部(SGL-IRS)は、海面水温、地表面温度の把握など、赤外線の特徴を活かした観測を行っている。また森林火災等の検知を目指した小型の赤外イメージャとして開発された地球観測用小型赤外カメラ(CIRC)は、小型の特徴を活かして陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)及び、国際宇宙ステーションの実験装置(CALET)に相乗り機器として搭載され、様々な観測を行っている。
本講演では赤外線による地球観測及び、衛星搭載赤外線センサについての基礎を述べるとともに、現在観測を行っている衛星搭載赤外線センサについてセンサの概要や観測原理を紹介する。
難易度:入門程度(大学一般教養程度)

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廣本 宣久

静岡大学

工学部 機械工学科 教授

1978年京都大卒、1985年京都大学理学博士。1984年郵政省電波研究所に入所、1988年通信総合研究所主任研究官、1995年同光技術研究室長、1999年同企画課長、2001年通信総合研究所関西先端研究センター長、2003年総務省情報通信政策局技術政策課企画官。2005年より静岡大学教授。この間に赤外計測技術、テラヘルツ検出器およびセンシング技術等の研究において、60 編以上の論文を発表、5件の特許を取得。日本赤外線学会前会長、学術振興会第182委員会主査、テラヘルツテクノロジーフォーラム理事、応用物理学会、電子情報通信学会、OSA、IEEE各会員。1998年科学技術庁長官賞研究功績者、郵政大臣表彰業務優績個人受賞。

藤澤 大介

三菱電機(株)

先端技術総合研究所 先進機能デバイス技術部 画像センサ技術グループ 主席研究員

2002年,豊橋技術科学大学大学院工学研究科電気電子工学専攻 修士課程修了.2005年,同大学院工学研究科電子情報工学専攻 博士後期課程修了.同年,三菱電機株式会社に入社.同年より赤外線固体撮像素子の研究開発に従事し,現在に至る.博士(工学).

小川 新平

三菱電機(株)

先端技術総合研究所 先進機能デバイス技術部 画像センサ技術グループ 主席研究員

2005年3月 京都大学大学院電子物性工学専攻博士後期課程修了
2005年4月 三菱電機株式会社先端技術総合研究所入社
2012年4月 主席研究員
RF-MEMS、プラズモニクス・メタマテリアル応用デバイス、波長選択/偏向検知非冷却赤外線センサ、グラフェン光検出器の開発に従事

宇田 康

日本アビオニクス(株)

赤外線サーモグラフィ事業部技術部研究開発グループ マネージャー

1999年 武蔵工業大学 工学部 電気電子工学科卒業
1999年 日本アビオニクス株式会社 入社
2002年 赤外線サーモグラフィ装置の開発に従事
2018年 現職

舘花 一人

(株)アイ・アール・システム

営業1部EOシステム課 営業技術

株式会社アイ・アール・システムに入社。赤外線カメラや赤外線センサを検査するための試験装置の提案、販売、保守を行う。主な製品は、黒体炉、コリメータ、赤外分光計測器、防衛用光波検査装置など。 また、赤外線カメラや分光測定器の販売と共に、それらの計測器を用いた測定サービスを担当。顧客の要望に合わせた測定系の構築や、客先へ訪問しての各種計測を実施。

片山 晴善

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構

第一宇宙技術部門 先進光学衛星プロジェクトチーム 主任研究開発員

1998年,大阪大学理学部卒業.
2000年, 日本学術振興会 特別研究員.
2003年, 大阪大学院理学研究科宇宙地球科学専攻修了
(理学博士).
同年,宇宙開発事業団 宇宙航空特別研究員,
2006年, 宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センターにて地球観測用の光学センサの開発に従事
2016 年 先進光学衛星プロジェクトチーム
所属学会:日本赤外線学会,日本リモートセンシング学会
日本天文学会